NextcloudでBasic認証とクライアントアプリを両立する

※本記事はQiitaの投稿と同じ内容になります。

はじめに

※本投稿において、クライアント認証と記載があった場合はクライアント認証を、それ以外のクライアントという記載についてはNextcloudのクライアントアプリを指します。 まぎらわしいのでなるべくクライアントアプリと書くようにしていたつもりですが、漏れがあったらすみません。

経緯

一年前からスマホやノートPCで写真やメモを共有するのにVPS上でNextcloudを使っていた。DropboxやGoogle Driveと比べるとマイナーなので手さぐり感はあったが、結果としては非常に便利で、とくに問題もなかったので、そろそろこれを自宅のファイルサーバへ統合したい。

これまで一時的なファイル置き場だったのが母艦への格上げとなれば、当然セキュリティにも気を遣う。Nextcloudを信用していないわけではないが、いくら戸締りが万全だからといって、ドアにアクセスし放題というのは気味がわるいので、Basic認証やクライアント認証で自分以外のアクセスはWebアプリの手前でシャットアウトしたい。

そこで試しにBasic認証を設定したところクライアントアプリが接続できなくなってしまったので、なんとか両立できないか試行錯誤してみた。

構成

後述の解決策(妥協案)に関係する点について補足すると、

おおまかな結論

クライアントアプリからのBasic認証は結局できなかった。 そこでNextcloudのクライアントアプリからのアクセスのみBasic認証の対象外にすることで妥協した。。 クライアントアプリからのアクセスはユーザーエージェントで判別する。

条件分けとしては以下の通り

これでクライアントアプリを使いながら(ブラウザを含む)それ以外のアクセスはBasic認証を要求できるようにできた。 後述のようにBasic認証対象外のユーザーエージェントはかなり限られるので、個人的には妥協案としては十分だと思っているがどうだろうか。

解説

概要

ブラウザであれば当たり前にできるBasic認証だが、http通信をするからといって必ずしも実装しなければいけないわけではないらしく、事実クライアントアプリは対応していなかった。 今回の方針としてはクライアントアプリのアクセスをどうにかして特定し、Basic認証の対象外としたい。

Nextcloudを動かしているWebサーバのログを見たところ、以下のようにクライアントアプリと思わしきユーザーエージェントが見られた。

Mozilla/5.0 (Windows) mirall/3.0.1stable-Win64 (build 20200828) (Nextcloud)
Mozilla/5.0 (Android) Nextcloud-android/3.13.0

ということで判定の条件としてはユーザーエージェントを利用する

クライアントアプリからのアクセス(Android、Windows共通)

ユーザーエージェントの例:

これらのアクセスはBasic認証から除外する。

後述するがこれは認証後の通常のアクセスであり、これだけだとログインができない。その意味では安全だともいえる。

ログイン(Windowsクライアント)

ユーザーエージェントの例

Windowsのクライアントの場合、ログインの際は既定のブラウザへリダイレクトされる。(自分の環境ではFirefox)そのためログインの際は問題なくBasic認証を行える。安心。 ちなみにあくまでもログイン時のフォーム入力を別ブラウザで行うというだけで裏でクライアントとのやり取りも発生してるらしく、上記のクライアントアプリからのアクセスで認証を無効にしていないと認証は完了しない。

ログイン(Androidクライアント)

既定のブラウザでログイン画面を開くPCと違って、AndroidのクライアントはChromeでもFirefoxでもない謎のブラウザ画面が出る。この際のアクセスについてUserAgentを調べたところ、以下のようになっていた

Samsungとなっているのでもしやと思って調べたら、やはり自分のスマホ(Galaxy Note 10)の型番だった。

謎ブラウザ画面の正体はともかく、残念ながらBasic認証には対応していないため、これもBasic認証の対象から外す必要がある。

このUserAgentについては

ということで普通のログとしても出現頻度としてはかなり珍しいうえ、(FirefoxやChromeならまだしも)このAndroid機種固有のユーザーエージェント名をピンポイントに使っての不正アクセスというのも考えにくい。 ということで、これを認証の対象外にすることについてもセキュリティ上のリスクは低いと判断。

具体的なNginxの設定例

map $http_user_agent $authentication {
    default         "Access Restricted";
    "~Nextcloud" "off"; 
    "~Samsung SM-N9700" "off";
}   
server {
    (略)
	server_name nextcloud.example.com;
    auth_basic             $authentication;                                                             
    auth_basic_user_file   /etc/nginx/htpasswd;
    (略)
}

mapディレクティブで$http_user_agentによってauth_basicのオンオフを切り替えるように設定している。 この設定だとユーザーエージェントにNextcloudと含まれると認証が無効になる。 今回はAndroidとWindowsで設定分けるのが面倒でこうしたが、より安全にやるなら上記のユーザーエージェントに完全一致するようにすればいい。 そこまでするとクライアントアプリのバージョンアップの度に修正が必要になるが自分一人の分であればまあなんとかなるか。

手探りでやった割には妥協案としてはいい塩梅になったと思う。 処理自体はシンプルなのでほかの認証でも応用出来そうだし、個人的にはクライアント認証にしたいのでそのうち試す。

その他試した(そしてうまくいかなかった)こと

※以降にGithub issueなど英語のページを参考にした個所がありますが、筆者の英語力が半端なうえ流し読みなので正確性は保証しません、悪しからず…

URLにBasic認証情報をつけて設定する

Basic認証はhttps://username:password@nextcloud.example.comという形式でアドレスを指定することで、ダイアログなしに認証できるという構文(?)がある。Nextcloudサーバをこれで指定すればWebクライアントでBasic認証できるのではないかとおもったが、だめだった。

以下を見る限り以前はこの書き方で要Basic認証のドメインでもクライアントアプリで対応していたらしいが、最新のではできなくなった模様。

Basic auth not working with client · Issue #2046 · nextcloud/desktop

以下はIEについての記事だが、これによると以前は対応していたがこのURLの構文が悪用された結果対応しなくなったらしい。

URL 構文にはユーザー名とパスワードが含まれていません | Microsoft Docs

status.phpをBasic認証対象から外す

status.phpへのアクセスは認証を外す必要があるという情報があったが、自分の環境ではそれだけではうまくいかなかった。

HTTP Basic Authentication · Issue #371 · nextcloud/android

このページの下の方に新しい認証フローがBasic認証に非対応との旨があったので、やはり以前はできたが今はできないという感じか…。

Nginxでif文によって認証の有無を変更する

Nginxではif文が使えるので以下のようにBasic認証を設定しようとしたらエラーになった。

server {
    if ( $http_user_agent  !~ Nextcloud ){
        auth_basic   "Secret site";
        auth_basic_user_file   /etc/nginx/htpasswd;
    }
}

以下によるとif文内ではauth_basicは設定できないらしい。その代わりmapで代用できるらしいということで試してうまくいったのは上記の通り。

Basic Authentication for All Except Listed User Agents in nginx - Stack Overflow

その他参考資料